初恋Daysーあの場所で、また逢えたなら
「華だよ」
即答すぎて、頭の中が一瞬、真っ白になった。
いま何ていったの?
「え?あの……え?」
“成の初恋ってさ……”あたしそう間違えて聞いちゃったよね?
「俺の初恋っしょ?華だよ」
え?ちょっと待って……。
成の初恋があたし?ウソでしょ?
さすがに動揺するよ、あたし。
「ふっ……なに驚いてんだよぉ。ちゃんとプロポーズしただろ?昔。あれももう10年以上も前なのか……」
プロポーズ……?10年以上も前……?
「もしかして、タンポポ……?」
「そうそうっ!原っぱに咲いてたタンポポ取って、“ボクのお嫁さんになってー”って華に渡してさ。色羽とふたりで華にプロポーズしたっけ」
「あの時のこと……まだ覚えてたの?」
「だって俺の初恋だしなっ」
成の笑顔に胸がぎゅってなる。
あの時のことなんて、成はとっくに忘れてるって思ってた。
こんな小さなことでも、すごくうれしくなってる自分がいる。
バカみたい。あたし。
いま、成は砂歩と付き合ってるのに。
胸がぎゅってなるたびに砂歩の顔も浮かぶ。
「あれ幼稚園の時だよねぇ?」
「マセてたって?ほっとけ」
成の初恋はあたしだったの?
あれから成は、いつまであたしを好きでいてくれたの……?
そんなバカみたいなこと考えちゃう自分がいる。
「まぁ、あのとき華にフラれたしなぁ。“華はパパと結婚する~”って。いま思い出すとクソ可愛いな」
「フラれたって……あたしそんなつもりじゃ……」
なにあたしムキになってんだろ。
「ハハッ……懐かしいなぁ~」
そんな遠い昔のことを後悔したって、どうにもならない。
あたしはきっと、成に彼女が出来るまでは、自分の本当の気持ちに気づかなかっただろうから。
17歳になって、やっと自分の初恋に気づくなんて。
あたしって本当、自分でも呆れるくらい鈍感だわ。