初恋Daysーあの場所で、また逢えたなら


――――――……



朝、色羽の腕の中で目を覚ました。



起こさないように、色羽の腕をそっと動かそうとする。



「……ん……華……?」



「あ、ごめん。起こしちゃった?」



色羽は右手で目をこすり、眠たそうな目であたしを見た。



「おはよ……華」



色羽の優しい声に、胸がぎゅっと締め付けられる。



朝の光で明るいこの部屋で、こんなに顔を近づけて見つめ合うのはやっぱり恥ずかしい。



「お、おはよっ」



「……いま、何時?」



あたしは部屋の時計に目をやる。



「えーとね、9時半」



「そっか……」



「そろそろ、起きないとねっ」



そう言ってあたしが起き上がろうとすると、色羽はあたしの腕を掴んで引っ張り、もう一度あたしを布団の上に寝かせた。



布団の上に横になったまま、色羽はあたしの体をぎゅっと抱きしめる。



「ちょっと……寝ぼけてんの?」



「うん」



「ウソつき。寝ぼけたフリでしょ?」



「うん」



あっさり認めた色羽がなんだか可愛く思えた。



「今日どこに行くか知らないけど、そろそろ出掛ける準備しようよ……って……色羽?」



色羽はあたしを抱きしめたまま、再び目を閉じる。



「あと5分だけ……いや10分だけ……」



「5分ね」



あたしが言うと、色羽は目を閉じたまま言った。



「わかった。5分だけこのまま……こうしていよ」



色羽が目を閉じていてくれてよかった。



色羽の胸に顔をくっつけたあたしの顔は、いまきっと赤い。



温かくて。心地いい。



彼の体温。ぬくもり。



あたしは、心穏やかな朝を迎えていた。
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