初恋Daysーあの場所で、また逢えたなら

砂の上で靴を脱いで、あたしたちは裸足になった。



波打ち際まで全力で走っていく。



――バシャンッ。



足首の上あたりまで、水に入った。



「冷たくて気持ちいいねっ」



「なっ」



ふたりとも笑顔になる。



「華」



「なに?」



――ピシャッ。



「冷たっ!色羽ーっ!」



色羽が両手で水をすくって、あたしの顔に向かってかけた。



「べーっ」



舌を出して、イタズラっぽく笑う色羽。



「もぉ!お返し!えいっ」



あたしも両手で水をすくって、色羽にかけた。色羽が咄嗟に後ろを向いたから、色羽の服の背中に思い切りかかった。



「うーわっ!すげぇ濡れたじゃん」



「色羽からやってきたんでしょーが」



「くっそ!お返しっ」



「アハハッ……やめてよ、もぉ!」



逃げ回るあたしに、水をかけてくる色羽。



はしゃぎまわる、ふたりの笑い声。



まるで小さい頃に戻ったかのように、大きな声で笑い合った。



寄せては打ち返す穏やかな波。



春の季節に来る海も、悪くないって思った。
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