初恋Daysーあの場所で、また逢えたなら
はしゃぎ疲れたあたしたちは、砂浜の上に倒れこむ。
「ねぇ、色羽」
「ん?」
「砂でお城つくろうよっ」
あたしは色羽の顔を見て、満面の笑みを見せる。
「城?山じゃなくて?」
「山なんて簡単じゃーん。ねーねーお城つくろーよー」
「別にいいけど。出来るかわかんねーぞ?」
「最初から諦めてたら、出来るものも出来ないって。何事もやってみないとねー」
「よっしゃ。つくってみっか」
「わーいっ」
あたしたちは起き上がって、砂でお城をつくり始めた。
幼稚園のとき、みんなはよく砂場で、おだんごや山をつくってトンネルを開通させたりして遊んでた。
だけどあたしは、あの頃ひそかにお城をつくりたいと思っていた。
絵本で見た王子様とお姫様が出逢う素敵なお城。
幼稚園のときにはつくれなかった砂のお城を、高校生になったいまは、きっとうまく作れるに違いない。
幼い頃にできなかったことを、簡単にできるようになっていく。
大人になるって、そういうことなんだろう。
いろんなことが、変わっていくということ。
逆に、大人になっていく上で失っていくものは、なんなんだろう。
幼い頃はできていたのに、いまはできなくなったもの。
失ったもの。
それはきっと。
あの頃よりも素直になれなくなった心――。