初恋Daysーあの場所で、また逢えたなら
「出来たね」
幼い頃に想像していたよりもずっと立派で素敵な砂のお城が完成した。
「満足ですか?お姫様」
「ふふっ。とっても!写メとろっ!あ、動画もとろ」
砂のお城をケータイのカメラで撮って、保存した。
「よし。次は動画~」
動画で色羽の顔にケータイを向ける。
「色羽、お城をつくり終えた感想は?」
「疲れた」
「もぉー。他にないのー?」
「腹へった」
「色羽ってばぁ」
「華が喜んでくれると思ったから頑張った」
ケータイの画面にうつる色羽の笑顔をあたしは見つめた。
「ありがとね……色羽」
「楽しかったからいーよ」
そう言って色羽は、砂の上に寝っ転がった。
“華が喜んでくれると思ったから頑張った”
その言葉が、こんなにもうれしく感じるなんて。
胸がぎゅっとなる。
あたしはケータイの動画を撮り終えて、それを保存した。