初恋Daysーあの場所で、また逢えたなら

「最近、全然父ちゃんと会話してねぇなって思って」



色羽……。



顔は笑っていても、声はどこか寂しそうに感じた。



「母ちゃんが生きてたら、父ちゃんと俺、こんなふうにはならなかったんかな」



そう言って色羽は、砂浜の上に寝っ転がった。



「母ちゃんはなんで、俺を産んだんだろ……?」



「色羽……なに言って……」



「俺を生まなきゃさ、母ちゃんはいまも生きてたかな」



「なに言い出すの?」



「母ちゃんが死んだのが俺のせいなら、父ちゃんはいつまでも俺を許せないだろうな……」



色羽がなんでこんなことを言い出すのか、最初あたしには理解できなかった。



色羽のお母さんは、病気で亡くなった。



なんで色羽は、お母さんが死んだことを自分のせいだと思ってるの?



こんなふうに心の中でずっと思って生きてきたの……?



あたしは、ハッと思い出す。



もしかしてまだ色羽……。



“あの時”のこと……。



ずっと心の中にあったの……?



――あれは、あたしたちが小学生の頃だった。
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