初恋Daysーあの場所で、また逢えたなら

言葉って恐ろしい。



誰かのたった一言で。



その人の生き方を、変えてしまうことだってある。



心に刻まれて、ずっと消えないこともある。



言葉で傷つけるのは、すごく簡単なんだ。



小さな心を壊すなんて、なおさら。



“あの時”のこと。



色羽の心の中から消えることはなかったのかもしれない。



まだ幼かった色羽にとっては、おばさんたちの言ったことが事実だと受け止めてしまったに違いない。



あたしや成が、どんなに否定しても。



お父さんの態度から、そう思わずにはいられなかったのかもしれない。



仕事が忙しいからって、色羽の学校行事には一度も来たことない。



色羽は、お父さんに遊んでもらった記憶なんてほとんどないって言ってた。



うちに預けられることが多かった色羽。



うちの親が色羽に優しくすればするほど、色羽はもしかしたら苦しかったのかもしれない。



そのことが余計に、お父さんの愛を感じられない原因になったのかもしれない。



あれからずっと……心のどこかで忘れられずに、そう思って生きてきたの……?



普段はお母さんの話もしないし、普通に生活して、普通に笑ってた。



どんなに“普通”にしていても、いままでずっと消えることのない悲しみを抱えていたのかもしれない。



あたしはなんで今日まで気づいてあげられなかったんだろう。



一緒にいて、色羽のなにを見てきたんだろう。



もしかして成は、そんな色羽に気づいてた……?



そんな気がする。



成は気づいてたのかもしれない。



色羽の心の痛みを。



いつもそばにいたのに、



あたしだけが気づいてあげられなかったんだ……。
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