初恋Daysーあの場所で、また逢えたなら
「華……?」
砂浜の上に座っているあたしは、両手で砂をぎゅっと掴む。
「……バカ。バカ、バカッ!」
「なんだよ、急に」
「色羽のお母さんが聞いたら悲しむよ。体が弱かったら、子供産んじゃいけないの?お母さんは、色羽に逢いたかったんじゃん!」
周りが何て言おうと関係ないじゃん。
色羽のお母さんは、逢いたかったんだよ。
愛したかったんだよ。
自分の子供を。
だから体が弱くても、きっとすごく頑張って、頑張って、産んだんじゃん。
「お母さんが病気になったのは色羽のせいじゃないっ!誰のせいでもないっ!」
「華……」
「色羽のお父さんだって、それくらいわかってるはずだよ!許すとか許さないとか、そんなこと思ってるはずないっ!そんな人じゃないっ!だって……」
だって……だって……。
違うって信じたいよ。
「色羽のお父さんだから……絶対、そんな人じゃないっ」
だからお願い……。
「もう十分苦しんだでしょ……?自分を責めたりしないで……」
色羽は起き上がって、泣いてるあたしを抱き締めた。
「色羽がそんなふうに思ってるから……色羽のお母さん……15年間も空の上から心配しなきゃいけなかったじゃん……っ……うぅっ……」
「……ホントだな」
「もぉ……お母さんのこと……ラクにしてあげなよぉ……」
「ん……」
「……自分のことも……うぅっ……ラクにしてあげて……」
「わかった……わかったよ、華……」
「ふぇぇ……んっ……っく……」
「泣くなって……」
「バカぁ……」
泣きながら色羽の胸を拳で叩き続ける。
「ごめんて……華……」
もっと早く打ち明けてくれればよかったのに。
そしたらもっと早く。
ほんの少しでも、ラクになれたかもしれないのに。
色羽の心の痛みに、
気づいてあげられなくて、ごめんね。
ごめんね……色羽。
「……今日、華と一緒に来れてよかった……さんきゅ」
そう言った色羽の声は、かすかに震えていた。
あたしが色羽の背中に手を回して、優しく背中をさすると、色羽はあたしの肩に顔をうずめた。
色羽は肩を震わせ、静かに涙を流していた。
ほとんどお母さんの記憶がない色羽。
それでもお母さんが恋しくないはずない。
自分をこの世界に生んでくれた人だもん。
大切な人を亡くすということ。
それは、どんなに時間が流れても、
普通に過ごしてるつもりでも、
消えることのない苦しみや悲しみがあるんだと。
色羽を抱きしめながら思った――。