初恋Daysーあの場所で、また逢えたなら

「華……?」



砂浜の上に座っているあたしは、両手で砂をぎゅっと掴む。



「……バカ。バカ、バカッ!」



「なんだよ、急に」



「色羽のお母さんが聞いたら悲しむよ。体が弱かったら、子供産んじゃいけないの?お母さんは、色羽に逢いたかったんじゃん!」



周りが何て言おうと関係ないじゃん。



色羽のお母さんは、逢いたかったんだよ。



愛したかったんだよ。



自分の子供を。



だから体が弱くても、きっとすごく頑張って、頑張って、産んだんじゃん。



「お母さんが病気になったのは色羽のせいじゃないっ!誰のせいでもないっ!」



「華……」



「色羽のお父さんだって、それくらいわかってるはずだよ!許すとか許さないとか、そんなこと思ってるはずないっ!そんな人じゃないっ!だって……」



だって……だって……。



違うって信じたいよ。



「色羽のお父さんだから……絶対、そんな人じゃないっ」



だからお願い……。



「もう十分苦しんだでしょ……?自分を責めたりしないで……」



色羽は起き上がって、泣いてるあたしを抱き締めた。



「色羽がそんなふうに思ってるから……色羽のお母さん……15年間も空の上から心配しなきゃいけなかったじゃん……っ……うぅっ……」



「……ホントだな」



「もぉ……お母さんのこと……ラクにしてあげなよぉ……」



「ん……」



「……自分のことも……うぅっ……ラクにしてあげて……」



「わかった……わかったよ、華……」



「ふぇぇ……んっ……っく……」



「泣くなって……」



「バカぁ……」



泣きながら色羽の胸を拳で叩き続ける。



「ごめんて……華……」



もっと早く打ち明けてくれればよかったのに。



そしたらもっと早く。



ほんの少しでも、ラクになれたかもしれないのに。



色羽の心の痛みに、



気づいてあげられなくて、ごめんね。



ごめんね……色羽。



「……今日、華と一緒に来れてよかった……さんきゅ」



そう言った色羽の声は、かすかに震えていた。



あたしが色羽の背中に手を回して、優しく背中をさすると、色羽はあたしの肩に顔をうずめた。



色羽は肩を震わせ、静かに涙を流していた。



ほとんどお母さんの記憶がない色羽。



それでもお母さんが恋しくないはずない。



自分をこの世界に生んでくれた人だもん。



大切な人を亡くすということ。



それは、どんなに時間が流れても、



普通に過ごしてるつもりでも、



消えることのない苦しみや悲しみがあるんだと。



色羽を抱きしめながら思った――。
< 220 / 328 >

この作品をシェア

pagetop