初恋Daysーあの場所で、また逢えたなら

「え?中3の時?なんかあったっけ?」



あたしが聞くと、色羽は優しい笑顔を見せる。



「あったよ」



「なぁに?」



「“倒れたら、また立ち上がればいい”……覚えてるか?華」



「あ、うん……覚えてる。色羽がケガした時にあたしが言った言葉……?」



「うん。あのときの言葉。これからもずっと忘れないと思う」



中3の時、バスケ部だった色羽が、中学校生活最後となる大会の前、練習中にケガをしてしまって……。



最後の試合なのに、出場することが出来ないと知ったとき、



落ち込んでいた色羽を、あたしはなんとか励まそうと必死だった。



色羽は、人前で泣いたりしない。



だけど、このときだけは、悔しいのか悲しいのか、つらいのか……。



行き場のない気持ちを必死に抑えつけて。



色羽の目には涙が溢れているのに、泣くのをグッと我慢していた。



そんな色羽を見て、あたしが泣いちゃったんだけど……。



そのとき、あたしは言ったんだ。



『倒れたら、また立ち上がればいいじゃんっ!つらいなら手も貸すし、肩だって支えるよ。色羽は、ひとりじゃないんだからねっ!』って。



最後の大会の前にケガをした色羽。



あのまま大好きなバスケをやめてしまいそうな雰囲気だった。



気持ちごと倒れたまま、諦めて欲しくなかった。



もう一度、立ち上がって欲しかった。



ひとりで頑張るのが苦しいなら。



つらいなら、あたしが手を貸す。肩だって支える。



何度、倒れたって。



何度だって、手を差し伸べる。



大好きなバスケを続けて欲しい。



あの時は、その思いで必死だった。
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