初恋Daysーあの場所で、また逢えたなら

「色羽……あのさ……」



「うん」



「色羽にとって、いちばん大切なものってなに?」



「え?それは……つーか、急になんだよ?」



あたしは、電車の窓から遠くの景色を見つめる。



「……前にね、成が言ったの」



「成がどした?」



「成はね、世界でいちばん……色羽とあたしのことが大切なんだって」



そう言った時の、成の顔がいまでも忘れられない。



「これから先、あたしたちふたり以上に大切だって思えるものには、出逢えない気がするって……」



一緒に過ごしてきた年月。



笑ったこと。泣いたこと。苦しい時も、うれしい時も一緒だった。



たくさんの思い出。



3人の絆。



「成が……そんなこと言ったのか……?」



「うん……。なんかね、最近……あの言葉を受け入れられるようになってきた自分がいるんだよね」



「え……?」



いちばん大切に想われていても、彼女にはなれない。



成とあたしは、幼なじみで。



それ以上とかそれ以下とか、曖昧なものはなく。



あたしたちは、恋人にはなれない。



「成への想いを吹っ切る準備が始まってるのかもって……そう思った」



成を想うと、切なくて苦しい気持ちになる。



でも色羽といると、あたたかくて穏やかな気持ちになる。



“俺のとこにくればいいじゃん”



そう色羽が言ってくれたのは、2年の時の文化祭。



あれから、ずっと待たせてきてごめんね。



最近、色羽といるとドキドキしてる自分がいることにも気づいた。



好きになり始めてるのかもしれないって思ったの。



あたしの答えは……これからもっと、色羽を好きになりたい。



成への気持ちは。



あたしの初恋は。



もう……思い出にしたい――。
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