初恋Daysーあの場所で、また逢えたなら

時刻は、夕方の5時45分。



約束は6時だけど、なんだか落ち着かなくて、あたしは家の近くの原っぱにやってきた。



結局、なんて色羽に告白しようか決まっていない。



もう、思いっきりぶつかってみよう。



その時、感じたまま、色羽に想いをぶつけよう。



「華」



やってきたのは、色羽ではなく成だった。



「成?どしたの?砂歩と一緒にいるのかと思ってた……」



「色羽からメール来ててさ。6時に原っぱでって。華も?」



「うん。え?成も色羽に……?」



「そう。華はなんの用か聞いてる?」



「ううん」



わざわざ、3人でここで待ち合わせって……色羽は一体なにを考えてるんだろう。



確か色羽は記念日って言ってたよね。



一体なんの記念日なの?



あたしに背を向けて、その場にしゃがみ込んだ成。



成の背中を見つめていると、成は笑顔で振り返って立ち上がった。



「はい、華ちゃん」



成は、原っぱに咲いていた黄色いたんぽぽを摘んで、あたしの前に差し出した。



「……懐かしいだろ?」



そう言って成は微笑む。



「うん……」



目を閉じたら、一瞬であの頃に戻れる。



―――……

『はなちゃん!おおきくなったら、ボクのおよめさんになって』



『なるくんのおよめさんに?』



『ダメだよ。はなちゃんは、ボクのおよめさんになるんだから』



『いろはくんのおよめさんに?』



幼い頃の記憶。



色羽と成が、原っぱに咲いていた黄色いたんぽぽを摘んで、



あたしの前に差し出した。



『ありがとっ』



目を閉じれば、一瞬で戻れる。



まだ純粋で無邪気だったあの頃に――。
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