初恋Daysーあの場所で、また逢えたなら
病院に駆けつけると、音のない静かな部屋に連れていかれた。
白いベッドの上に、白い布が被せられている人が仰向けになっている。
それを見たあたしは、その場から一歩も動けなくなった。
違う……よね……?
お母さんと成は、ゆっくりとベッドの近くへと歩いていく。
そして成は、顔の部分に被せられた白い布をめくった。
「うそだろ……?なぁ……こんなの……」
成は、その場に泣き崩れた。
「色羽ぁぁぁ―――っ」
なんで……?
なんで成……泣いてるの……?
色羽なわけないじゃん……。
そんなわけないじゃん……。
「華、こっちに来なさい」
そう言って、口元を手で覆いながら涙を流すお母さんは、あたしを見つめる。
あたしは首を振った。何度も横に振った。
「なんで……?なんでふたりとも……泣いてんの……?」
違うもん……こんなの信じない……。
あたしは一歩ずつ、後ずさる。
「色羽なわけない……ぜったい違う……」
なんか悪い夢を見てるんだ……そうきっと、夢だよ……。
早く目を覚ましてよ……こんな夢見るの嫌だよ……。
「嫌だよ……いや……いやぁぁぁ―――っ!」
――バンッ。
勢いよく後ろのドアが開いて、あたしは振り返る。
そこには、息を切らした色羽のお父さんが立っていた。
――ドサッ。
色羽のお父さんは手に持っていたカバンを床に落とし、1歩ずつベッドへと足を進めていく。
色羽のお父さんは、動かない彼の顔を見つめたまま、しばらく立ちつくしていた。
「……色羽……っ……うぅっ……色羽ぁ……」
色羽のお父さんも涙を流していた。
なんでみんな泣いてるの……?
色羽なわけないじゃん。
だって部活の前に話したんだよ。
たった数時間前に話したんだから。
約束したんだから。
『6時に原っぱで』
そう色羽が言ったの。
色羽は、あたしとの約束は……
絶対。
絶対に守るんだから――。