初恋Daysーあの場所で、また逢えたなら
そんなおじさんの様子を見て、成が口を開く。
「いままで色羽がどんな気持ちで生きてきたか、おじさんにわかる……?若いときに妻を亡くして、残されたおじさんだって、つらかったかもしれない。だけど色羽だって……まだたったの3歳だった」
成は泣きそうになりながら、堪え、話し続ける。
「ひとりで抱え込まずに、ひとりで頑張らずに、色羽と支え合って生きて欲しかった」
「成の言うとおりだ。でもな、もう時間は戻せない。いまさら後悔したって、もう遅い……。アイツはもういない。どうにもならねぇんだ」
そう言っておじさんは、声を震わせる。
「遅くないよ」
成は言った。
「色羽は、おじさんの話……ちゃんと聞いてるよ」
おじさんはうつむき、両手で顔を覆い隠す。
「……色羽ぁ……うっ……ううっ……」
弱々しい声を震わせて、おじさんは涙を流した。
「……すまなかった……父ちゃんが全部悪かった……色羽っ……」
おじさん……。
「頼む……頼むよ……戻ってきてくれ……」
色羽……。
おじさんの声……聞こえてる?
「おまえに……謝りたい……色羽ぁ……」
色羽……聞こえてるよね?
お父さんの本当の気持ち、ちゃんと聞こえた?
愛されてなかったわけじゃない。
ほんの少し。たった少しの気持ちで、
すれ違ってしまっただけかもしれない。
お互い、素直になれなかったんだよね。
本当の気持ちを知るのが怖かったんだよね。
でも本当は、そこにはなにひとつ怖いものなんてなかったんだよ。
色羽……。
お父さんを許してあげて……?
あたしがそんなこと言わなくても、大丈夫か。
だって色羽はお父さんのこと好きだったと思うから。
好きだったから、自分も愛されたいって思ったんだよね?
たったひとりのお父さんだもんね。