初恋Daysーあの場所で、また逢えたなら
西内は同じクラスで、華と仲が良くて、バイト先が同じの女の子。
そんなふうにしか彼女を見たことなかった。
『えっと……俺……』
こういう場面で、いつも言うセリフは決まってる。
“気持ちはうれしいけど、ごめん”
そう言おうとした。
『あのさ、西内……』
俺が言おうとした言葉を遮って、西内は言った。
『わかってるよ。成くんの好きな人……』
西内は俺を見つめた。
『わかってるけど、でも……それでも好きなの……』
西内の真っ直ぐな気持ちが、心に突き刺さる。
俺だって、このままじゃダメだって、気づいてた。
忘れたいのに、忘れる方法がわからなかった。
俺には大切な人がいて、守りたいものがある。
そのためには、自分の気持ちを消す必要があった。
それでもずっと、どうしていいかわからなくて、今日までズルズルときてしまった。
踏み出す勇気さえもなかった。
『成くん……。ごめんね、急にこんなこと言って……困らせちゃったよね?』
俺は、西内の前に立つ。
自転車のハンドルを持つ西内の手を、上からぎゅっと握りしめた。
街灯の下で、俺たちは見つめ合う。
『成くんの好きな人って……んっ』
俺は西内にキスをして、唇を塞いだ。
もう忘れるって決めたから。
西内の口からその名前を聞きたくなかったんだ。
―――……
「あの日から、成くんとキスしたりする関係になった……」
「……うん」
「でも付き合ってるのか、そうじゃないのか……成くんに聞けなかった。もし聞いちゃったら、そばにいられなくなるかもしれないって思ったら怖かったの……」
「西内……」
「だから図書室で華に見られたときね、付き合ってるって言ってくれて、すごくうれしかった」
俺は、座っている西内の頭をポンポンと優しくたたいた。