初恋Daysーあの場所で、また逢えたなら

「成くんが砂歩のことを好きじゃなくても……そばにいられるだけでいいって最初は思ってた……」



西内はうつむいたまま言った。



「そう思ってたはずなのに……キスしてても本当は不安で、つらくて……」



俺は黙り込む。



西内を傷つけるつもりで付き合い始めたわけじゃない。



でも、結局はこうして西内を傷つけてる。



俺のせいで。



「つらいなら……西内の好きにしていいよ……」



「ずるいよぉ……そんな言い方……」



俺はしゃがみこみ、西内の顔を見つめて微笑んだ。



「そうだよな、ごめん」



西内は俺に抱きつく。



「ううん。砂歩の方こそ、ごめんね。最初から成くんの気持ちは全部わかってるのに……」



全部わかってて、つらいはずなのに、傷ついてるはずなのに。



それでも西内は俺のそばにいようとしてる。



「……こんな俺でもいいの?」



「あの日から……成くんは砂歩のこと、見ようとしてくれてるんだよね?」



「うん……だから西内といる」



「最初から両想いのカップルなんて、ホント奇跡に近いもんね?いつか、成くんに砂歩のことを好きになってもらえるように、もっと頑張るっ」



「西内……」



「砂歩は、成くんと一緒にいるっ」



俺は、西内の体を優しく抱きしめる。



「わかった……。あの日、ちゃんと言葉にしなくてごめんな」



西内は俺の腕の中で首を振った。



俺は体を離し、西内の瞳を見つめる。



「俺と付き合ってください」



「……はいっ」



西内は目に涙をためて、笑顔で答えた。
< 68 / 328 >

この作品をシェア

pagetop