君がいたから
「これ……」

 クローバーの姿にというよりは、真己の行動に意表を突かれた私が一言呟くと、手の中の惨状に気付いた真己は、勢い良く手を引き戻した。

「あ、や、やっぱり今のなし!」

 顔も耳も真っ赤になっている。

「今日、もっとちゃんとしたのに替えてくるから!」
「あ!真己!」

 そして脱兎の如く走り去る真己に声をかけるも既に遅く、ものの数秒で姿を消した。
 私は話の展開についていけず、しばらくぽかーんと立ち尽くしていた。

 だがこれで本当にその日クローバー探しにいったのだからすごい。真己のお人好しは筋金入りなのである。
 四つ葉のクローバーは結局どうだったのかというと、見つからなかった。やはり人生そううまくはいかない。真己なんて私よりもしょげてしまった。
 でも、代わりにご利益がありそうな栞を手に入れた。なんてことはない、真己が見つけたあのしおれたクローバーを押し花にしたのだ。ちょっと不格好になってしまったけど、真己があんなに喜んでくれたし、私は大満足である。

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