君がいたから
 でも、あの時は本当に嬉しかったなぁ。ナンパから助けてもらったのもそうだけど、それ以上に真己に会えたのが嬉しかった。何せ、転校してから一度も連絡をとっていなかったから。

 私は、順調に行けば大学卒業を三年後に控えていた春に、両親への懸命の説得で一人暮らしを始めることにした。すごく中途半端な時期だとは思ったが、大学までの道のりが遠く、後三年近くも我慢することは嫌だったのだ。決して両親が嫌になった訳ではないと強く主張したら、最低でも月に一回は実家に帰ることを条件に許してもらえた。

 その日は無性にコンビニ限定のデザートが食べたくなり、22時を回っていたのにもかかわらず、着の身着のまま歩いて5分のコンビニへ行った。
 50mくらい先にコンビニの明かりが見えた頃、ナンパをされた。歩道側に車を寄せつつ、ターゲットの女性の歩調に合わせて車を進ませる、いわゆるナンパ車である。
 ウィンドウが開き、中からいかにもスケベそうな男が、いやらしい笑みを浮かべて私に声をかける。

「ねえねえ、一人?それなら、ちょっと俺達と話でもしよーよ」

< 17 / 33 >

この作品をシェア

pagetop