君がいたから
「ねえ、何か手伝うことない?」
「え?いいよ。菜々子はお客さんなんだから」
「そんなこと言わずに。手伝いたいのよ。真己だって家でご飯食べたらお手伝いしたじゃない」
「子供が出来る範囲だったよ」
「もー、変に謙遜しないでよ。私、高校の時に飲食店でバイトしたことあるから、ちょっとは役に立てると思うよ?」

 なかなかいい返事をくれない真己に、おばさんの一押し。

「菜々子ちゃんが手伝ってくれるなら助かるわー。今日は特に混んでるから」

 真己はしぶしぶ承諾した。
 おばさんからエプロンを借りて、テーブルの片付けやレジを担当した。食器洗いでもよかったのだが、華は見える所(カウンターの外)へということらしい。それは冗談で、手を荒らしてはいけないと気を使ってくれたんだろう。

 手伝い開始から二時間くらいでお客さんの足は減った。お店兼住家なので、きっちり午後11時には閉店することを常連さんも把握しているそうだ。
 それでも半分以上は席が埋まっていたが、三人いれば余裕だというので私のお手伝いはここで終了。

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