君がいたから
「お疲れさん。送っていくから、ちょっと待っててな。飲み物、来た時に座ってたところに用意してあるから」
「ありがとう」

 エプロンをたたみ、手荷物を持ってカウンター席に腰を落とした。真己の言っていた通り何やら飲み物が用意されている。クリーム色の無炭酸のようだ。炭酸が飲めないことを覚えていてくれたんだと、くすぐったい笑いがこみ上がる。

「あ!バナナミルク!おいし~い!」

 一口飲んで感激の声を上げる私に、着替え終わった真己が笑顔で顔を出す。メニューにないってことは、わざわざ作ってくれたのだろうか?それにしてもどうして私の好きな飲み物を知っていたのだろう?

「昔っから、何か飲むかって聞かれたらバナナミルクって答えてただろ?だから」

 不思議そうな顔の私に気付き、そう説明する真己。自分でも気付かなかった癖を知っていたなんて、ちょっと(いやかなり)嬉しい。

「好みが変わってなくてよかった」

 お礼と感動した旨を伝えると、真己は照れくさそうに笑った。

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