君がいたから
 しかし、真己のお人好しはこれで終わらない。
 次の日のお昼休み。校庭に遊びに行く子もいれば、室内で何かをして楽しんでいる子もいる。
 私はどちらかというと校庭派だが、この日は友達と「クローバー談議」をしていた。クラスでもちらほら、四つ葉のクローバーを持ってる子がいると言う噂があがったからだ。羨ましい気持ちとやる気が混ざり、今日も頑張って探すぞ!と決意を固めていると、クラスの何人かが私の名を呼んだ。

「榎本さん、呼んでるよ」

 見ると真己がドアの付近で手招きしている。私は不思議に思いながらも駆け足で真己の元に向かった。
 子供特有なのか、抜け道や秘密の場所といった大人が気付かないようなひっそりとした所を熟知している。真己も例外ではなく、昼休み最も人が少ない場所へ行き、本題へ入った。
 真己はごそごそとお尻のポケットを探りながら話をする。

「これ、俺が持ってても仕方ないし、俺の幸せを半分分けるってことでいいだろ?」

 最後の言葉と重なるように差し出された手の中には、昨日真己が見つけた四つ葉のクローバーがあった。
 違うところは、長時間放ったらかしにしていたからか、はたまたポケットに入れていたからか、元の姿を思い出せない程しおれていたという点。

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