美狐はベッドの上で愛をささやく
紅さんが指示を出すごとに、もたれている場所から、トクン、トクン、と心音が聞こえる。
その音を聞きながら、わたしは紅さんの指示通り、目を洗っていく。
「どう? 痛くない?」
クスリと笑う声が紅さんの胸から振動して、わたしに伝わる。
たかが泡が目に入ったくらいでそうやって悲しそうに話す紅さんはとても心配性なのかな。
何回も目にお湯をかけていると、次第に痛みも消えていった。
ゆっくり目を開けると、そこには眉根を寄せた紅さんの顔が間近にあった。
ドクリ。
その瞬間、わたしの胸が大きく跳ねた。
「も……へいきです……」
言った声は震えている。
なんだろう。
怖いっていうんじゃない。
お腹の底がムズムズして、声が震えてしまうんだ。
「良かった……。さ、残りの泡も流してしまおう」
そう言って、紅さんは元通り優しい笑顔になるとわたしから体を離した。
「あ…………」