美狐はベッドの上で愛をささやく
だけど、倉橋さんは悪くない。
悪いのはわたし。
父を殺してしまったわたしだ……。
「いいえ、いいえ!! それは違います!! 倉橋さんは、一生懸命わたしを助けようとしてくださいました。だから……そんなにご自分を責めないでください」
わたしは首を振って、それは違うと倉橋さんに話した。
「紗良君……ありがとう。ここで慰めなければならないのは私の方だというのにね、申し訳ないよ」
倉橋さんはそう言うと、また微笑み、口を閉ざした。
倉橋さんとわたしの間に流れる沈黙を塞ぐかのように、降り続ける雨がパラパラと葉っぱにあたる渇いた音が耳に届く。
父を失ったという悲しみで喉がつっかえ、何も言えずにいると、倉橋さんは沈黙を破り、ふたたび話しはじめた。
「君はこれからどうするんだい?
私が言うのも酷な話だが、君はこの村の人間に邪険に扱われているだろう? 普通の人間にとって、君は異質な存在だからね。君さえよければ、私と一緒に来ないかい?
私と一緒だと、おそらくはたいていの奴らは君を襲っては来ないだろうし……」