美狐はベッドの上で愛をささやく
「………………」
そうかもしれない。
味方がまったくいないわたしにとって、倉橋さんの存在はとても心強い。
でも……でも、わたしは……父がいたこの村にいたい。
父の面影を見出して生きていきたい。
そう思うのは、勝手なことなのかな……。
倉橋さんの提案をどう返事すれば良いのかわからず、しばらく押し黙っていると、倉橋さんは微笑んで、冷えきったわたしの背中に手をまわした。
「ごめんね、君を悩ませるつもりではなかったんだ。
私と一緒に居た方が君も休まるのではないかと思ってね。だが、今はこの話をする時ではないね。だけど、気が変わったら連絡してほしい」
倉橋さんは言い終えると、わたしをみんながいる部屋の中へと促(ウナガ)した。