美狐はベッドの上で愛をささやく
音がした方向に耳を傾けてしまった瞬間、前を走る足が恐怖心から絡まってしまった。
ドサリ。
「っぐ!!」
顔面から地面に倒れるのを防ごうとしたけど、わたしの腕は体を支えるだけの力は無く、漆黒の地面についた手は意味のなさないものになってしまった。
勢いよく地面に突っ込んだ。
鈍い痛みがわたしの顔から全身を襲う。
それと同時だった。
倒れたわたしの足首を……後ろから追いかけてきた『ソレ』に捕まってしまったんだ。
「くひひ、おいついた……」
…………ズズズズズズ。
震える低い声で『ソレ』が言うと、わたしは下へと引きずられていく。
「やっ、いや……!!」
両手を伸ばしてどこか掴まる物がないかを探すけれど、周りは闇しかない場所だ。
当然掴まる物なんて何もない。
手を伸ばしたまま、抵抗も出来ずに下へ、下へと引きずられていく。
引きずられる果ては、虚無。