美狐はベッドの上で愛をささやく
紅さんはやっぱり優しい。
朝っぱらから鬱陶(ウットウ)しく泣くわたしを、そうやって声をかけてくれる。
気にかけられるほど、わたしはいい人間じゃないのに……。
生きていたって、どうせみんなに迷惑をかけてしまうだけなのに……。
悲しい気持ちが喉につまって、紅さんの問いかけを否定する言葉をかけられない。
だから代わりに首を左右に振った。
「怖い夢でも見た?」
「……っつ!!」
……どうして、なんでこの人はそんなに優しいんだろう。
怖い夢は見ていない。
はじめは、怖かったけれど、途中で綺麗な銀色の狐に変わってからはすごく穏やかな夢にすり替わった。
だから、アレは怖い夢なんかじゃない。
わたしはまた、ブンブンと頭を振って、怖い夢なんか見ていないと否定する。
「紗良……」
「わたし…………知らないあいだに……紅さんにしがみついてた……ごめ、なさい……」