美狐はベッドの上で愛をささやく
ただ、わたしが自暴自棄に陥(オチイ)っているから、ああやって何も考えられないようにしてくれるんだ。
これ以上、おかしな霊体に付きまとわれないように……。
紅さんが言うには、霊体はわたしの感情で左右されるらしい。
わたしが悲しんだり苦しんだりすると、寄ってくるんだって……。
だから、霊体はわたしを責める言葉を囁(ササヤ)くらしい。
紅さんは、ただわたしを助けたい一心で、こうやってたくさん尽くしてくれる。
彼は目の前で困っている人を見過ごすことなんてできない、とても優しい人なんだ。
「紗良ちゃんは今日も美しいね」
わたしは汚い。
育ててくれた恩も忘れて、自分可愛さに日に日に弱っていく父を……。
見殺しにした。
それなのに、紅さんはわたしを美しいと言う。
きっと、これも霊体から身を守るための紅さんなりの優しさなのだろう。