美狐はベッドの上で愛をささやく
わたしの耳に、優しい声が聞こえてくる。
だから――ああ、もうそんな時間なんだって思った。
だけど、ダメ。
涙は全然止まってはくれない。
「っふ…………ごめんなさい」
泣き止むこともできないなんて……なんて情けないんだろう。
「紗良(サラ)ちゃん?」
「ごめんなさい」
泣くわたしの頭上から、心配する彼の声が聞こえる。
だけど、顔は上げられない。
ただただ、顔をクッションに預けて泣いていた。
「紗良ちゃん!?」
「っつ!!」
突然、わたしの体は宙に浮いた。
そうかと思うと、あたたかい腕に包まれてしまった。
「何が悲しいの? 怖い夢を見た? 話してごらん?」
……優しい声。
……あたたかい腕。
この人を……紅さんを、わたしは汚してしまった。
わたしはブンブンと首を振って、彼の腕から逃れようと体を捩(ヨジ)る。