美狐はベッドの上で愛をささやく
それなのに、紅さんはわたしを解放してくれない。
それどころか、さっきよりもずっと強い力でわたしの体を包んだ。
――ダメ。
わたしは汚い。
優しい腕で抱きしめたら……紅さんが穢(ケガ)れてしまう……。
「紗良ちゃん? 首を振るだけでは分からないよ? 何があったのか教えて?」
何も話さないままいるのに、一向に抱きしめる力を緩めてくれない。
……離して欲しいと思う反面、こうやってずっと抱きしめていて欲しいって願ってしまう。
この恋心を知られれば、紅さんはきっとわたしから背を向ける。
ややこしい子だって、そう思うだろう。
だから……。
「少し……追いかけられる夢を見て……」
わたしは嘘をついた。
生まれて初めての、嘘。
醜くて、汚らわしい嘘。
紅さんに嫌われたくないからっていうそれだけの理由の嘘を――。
……ついた。
なんて……わたしは醜い化け物なんだろう……。