美狐はベッドの上で愛をささやく
だけど……。
でも……。
今だけ……。
わたしを好きになって、なんておこがましいことは言わない。
ただ紅さんの傍にいたい。
わたしの想いは報われなくていい。
この結末は、どう考えてもハッピーエンドにはならないのは知っているから……。
だからせめて、今だけでいい。
紅さんの傍にいたい。
だったら、今まで通り、何もなかったようにふるまえば、それでいい。
神様、わたしは醜い化け物だけど……今だけでいい。
少しだけ、夢を……みさせてください。
わたしは紅さんの背中に腕をまわして、広い胸に体を預けた。
今は――今だけは……優しい体温が、わたしを包んでくれる。
わたしは優しい紅さんにすべてをゆだね、強く目を閉じた。
やがてやって来るだろう、絶望から逃れるために……。