美狐はベッドの上で愛をささやく
否定しても、紅さんは違うと言って自分の意見を譲(ユズ)らないから、微笑むしかない。
わたしを否定しないなんて、なんて優しい人なんだろう。
「おいで、髪を梳(ト)いてあげよう」
紅さんはそう言うと、クローゼットからブラシを取り出し、わたしをベッドの上に座るよう手を引いて促(ウナガ)した。
灰色の髪を梳かしてくれるブラシの感触がとても気持ちいい。
思わずうっとりと目を閉じてしまう。
「後ろで三つ編みにしてみようか……。リボンもかわいいかもしれない」
えっ?
リボン?
……なんて思っていると、あっという間に、灰色のみすぼらしい髪の毛は綺麗に三つ編みにされた。
その先には、わたしが着ているワンピースの桃色と同じ色の綺麗なリボンが乗っている。
――たったそれだけのこと。
それなのに、なんだか自分じゃないみたいだ……。