美狐はベッドの上で愛をささやく
たしか、霊媒師には『写し身』っていう、誰かの苦痛を別の人に渡すことができる方法があると聞いたことがある。
もしかすると、父はわたしの身代わりを買って出たに違いない。
父が犠牲になって、だから倉橋さんに会ってから、わたしの霊媒体質が軽減したんだ……。
わたしはどこまでも他人を不幸にする。
わたしが生きていれば、誰かを犠牲にしてしまう。
だからといって、わたしがこの世を去っても同じこと……。
汚れた魂を手に入れた霊体は実体化して、誰かを恐怖に陥(オトシイ)れる。
わたしはどこにいたって、みんなを不幸にする存在なんだ。
……いっそのこと、どこか人がいない場所に行ってしまいたい。
だけど、わたしの細い足じゃどこにも行けない。
それに、わたしの身代わりになってくれた父がいなくなった今、わたしの霊媒体質が以前と同じレベルになることもわかっている。