美狐はベッドの上で愛をささやく
とうとう熱いモノがわたしの口までやってくると、鼻がツンとして、目頭が熱くなる。
言いようのない、あたたかな涙が……。
わたしの目から溢(アフ)れて、頬を伝っていく……。
「あなたは……そう。そうだったんだ……。
そうやって、いつも守ってくれていたの……」
胸が震えて、狐の頭を撫でる手は止まる。
そうすると、うつ伏せになっていた狐の赤い瞳だけが涙を流すわたしを映し出した。
その仕草は、まるで自分に寄り掛かりなさいって言っているみたいに見える……。
「紅(クレナイ)さん……」
やっぱり、紅さんはどこにいても紅さんなんだ。
そうやって、いつも泣いているわたしを受け止めてくれる。
わたしは狐の姿をした紅さんの体に頬を乗せ、彼が放つ薔薇の香りと、なめらかな毛並みを感じた。
「紅さん……ありがとう」
胸の中に満たされた明るい涙が、外へと向かって流れ続ける。