美狐はベッドの上で愛をささやく
今までなら、紅さんの『美しい』に反論を唱えていたけれど、今はその言葉が嬉しくて、微笑んだ。
「美しい……」
紅さんはもう一度、ぽつりと呟(ツブヤ)いた。
「ん……」
わたしの口は、また紅さんによって塞がれる。
唇の輪郭をなぞる様に優しく触れられて、何度も、何度も啄(ツイバ)まれる。
わたしと紅さんの唇が重なるそのたびに、リップ音が聞こえた。
――恥ずかしい。
そう思う反面、もっとこうしていたいと願ってもいる。
だから、わたしは両腕を紅さんの広い背中にまわした。
「紗良……」
優しい声で耳元へと向かってささやかれると、わたしの体がけいれんする……。
「……愛してます」
込みあげてくる感情のままそっと告げれば、わたしの体がふわりと宙に浮いた。
――えっ!?
「わわっ!!」
体が不安定になって、床に落ちると思ったから、迷わず紅さんの首に両手をまわしてしがみ付く。