美狐はベッドの上で愛をささやく
「……ここはホテルだよ」
紅さんに体を預けたままそっと尋ねると、答えてくれた。
「あの愚(オロ)かな霊体に唇を奪われただろう?
君はわたしのものなのに、あんな輩に奪われて、我慢ならなかったんだよ」
霊体に乗っ取られた男の人にキスされるところ、やっぱり見られていたんだ……。
「だからその分、今日は、わたしが一日中、君の傍にいるから、覚悟してね。
とはいえ、覚悟するのはわたしの方かもしれないけれど……」
「あのっ……んっ」
覚悟って!?
苦笑を漏らす紅さんにどういう意味かと尋ねようとすると、わたしの口がまた塞がれた。
その日、紅さんが言ったとおり、わたしは一日中紅さんの傍にいた。
彼は何かにつけて、「美しい」とか「可愛い」を口にするから、わたしの顔は真っ赤になりっぱなし。
だけど、それすらも嬉しくて、わたしは優しい紅さんに腕をまわして、たくさん甘えた……。
でもね、わたし。
絶対に紅さんを誘惑なんてしてないからっ!