美狐はベッドの上で愛をささやく
「あ、笑った。その方がずっと紅兄(クレニイ)の花嫁さんらしいわ」
にっこり笑う真赭さん。
そこで、わたしはある事実を思い出した。
『ある事実』っていうのは…………。
「真赭さんっ! 紅さんを好きって言ったこと、嘘だったの?」
「ごめ~ん。紅兄があんなに口説いても全然気づいていないみたいだったから、つい……」
紅さんが言うとおり、どうやらわたしは本当に、真赭さんに嗾(ケシカ)けられたらしい。
真赭さんは舌を出し、悪戯(イタズラ)をした子供のように肩をすくめた。
「真赭さまっ! 若の花嫁様になんということをされたのでございますかっ!?」
「うっさい。生成はあたしが割ったコップを拾ってればいいのよ」
「そ、そんな……ひどいでございますぅううっ」
「男のクセに泣くなっ! わずらわしいっ!!」
真赭さんの言葉に傷ついたんだろう生成さんは、モコモコのカーペットの上に腰を下ろし、両足を横にそろえると、嗚咽(オエツ)を漏らし、泣いた。