美狐はベッドの上で愛をささやく
それくらい、倉橋さんはわたしにとって、大きな存在の人なんだ。
そんな人を、いったいどうやって忘れられるというのだろう。
懐かしい人との再会で、目頭が熱くなる。
目からは涙が込み上がってきた。
鼻の奥がツンとして、言葉にできない。
わたしは首を大きく振って、忘れないと表現した。
「紗良くんは変わらないね。
――いや、変わったかな?
表情がとても穏やかになった。
それに……ご飯も食べれるようになったのかな? 頬がふっくらしてきたね」
たくさん褒められて嬉しくて、口を開けて笑えば、倉橋さんの表情は曇った。
いったい、どうしたんだろう。
わたしも笑うのをやめて倉橋さんを見つめ返す。
「だけど、君は……それでいいのかい?」
倉橋さんの言葉がいったい何を示すのか、わたしは理解した。