美狐はベッドの上で愛をささやく

女の子は、何かに脅えたようにわたしから体を離し、消えていった……。





な……に?




どうやっても振り払えない恐怖は、太陽が昇る朝まで続く……ハズだった。





それなのに、どうしてあの子は消えていったの?



わたしの身に、いったい何が起こっているの?




しばらく呆然としていると、不意に何かの匂いがした。


その匂いは、とても甘い薔薇の香り……。



優しくて、それでいて、わたしを包むような、そんな匂いだった……。


これ、どこから匂ってきてるの?


ゆっくり体を起こせば……。



目と鼻の先に、月夜に照らされた一匹のほっそりとした大きな狐がいた。



その狐は、今まで見たこともないくらいとても綺麗。

狼くらいの大きい白銀色の毛をした体は月光を浴び、濡れたような雫を思わせる。


瞳は……綺麗な真紅。

どこからか匂ってくる、薔薇のように赤いその瞳の色は…………まるで。


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