美狐はベッドの上で愛をささやく
自力で生きていくことさえできなかったわたしを拾ってくれた紅さん。
わたしのために霊体と戦ってくれた紅さん。
わたしを……好きだと言ってくれた紅さん。
その紅さんを……わたしは…………。
ばかだ。
わたしはなんて大馬鹿者なんだろう。
女の人を殺そうとした今なら、両親がわたしを捨てた理由も、
みんながわたしを忌(イ)み嫌う理由も、
全部わかる。
だって、『殺せ』とわたしに囁(ササヤ)きかけてきたあの声は、霊体でも何でもない。
間違いなく、わたし自身の意識だった。
だからみんなは、白い目でわたしを見ていたんだ。
わたしは――……。
コノ世デモットモキタナイ存在ナンダ。
「うっ、わあああああああああっ」
痛いのは、血が滲む手じゃない。
紅さんが死んでしまうかもしれないっていう胸の痛み。