美狐はベッドの上で愛をささやく
両手に握り拳を作って決意する。
だけどやっぱり、ここに残るっていう言葉が口から出すことができない臆病な自分がいる。
「いいえ、私が聞きたいのは、他人がどうこうではなくて、『あなた』が、『どうしたいか』ということよ?」
まるでわたしが思っていることを知っているかのように、杏子さんは静かに指摘した。
「わたしが、どうしたいか?」
「ええ」
地面を見つめてる視線をゆっくり上げて杏子さんを見れば、彼女は大きくうなずいてみせた。
わたし…………は……。
「還りたい。紅さんのところに還りたい!!」
「決まりね」
彼女がそう言った直後、わたしの視界は真っ白になり、同時に体は重力を受けて重くなった。
目を開けると、そこにはロウソクに照らされている薄暗い洞窟と、地面に膝を着いた紅さん。