美狐はベッドの上で愛をささやく
そして、魂の抜け殻となってしまった、ぐったりしている杏子さんの体を強く抱きしめ、うなだれている倉橋さんが見える。
もどって、きたんだ……。
「おかえり、紗良……」
眉間に皺を寄せ、口元をほころばせ、それでいてどこか泣きそうな表情をした紅さんが、目覚めたわたしを見つめていた。
「紅さん……」
わたしは地面から体を起こすと腰を上げ、立ち上がる。
わたしはわたしの意志で、疲労している紅さんの傍に歩み寄る――。
ハズ、だった。
だけど、わたしの体は自由を失い、宙に浮く。
ふいに伸びてきた腕が、わたしの体に巻き付いた。
わたしはふたたび、体の自由がきかなくなり、拘束されてしまったんだ。