美狐はベッドの上で愛をささやく
人を嘲(アザケ)るような、そんな見下した笑い方……。
以前の倉橋さんなら、そんな笑い方はしなかった。
姿も……。
雰囲気も……。
倉橋さんの何もかもがすべて、変わってしまった……。
わたしはそれを理解した。
「たった、それだけのために……悪魔と契約を交わしたのか!?」
紅さんは眉をひそめ、理解できないというように、そう告げた。
「『それだけ』だと? 俺にとって、杏子はかけがえのない大切な存在だ。そのためなら、何にだってなってやる」
倉橋さんは犬歯を見せつけ、怒りをほとばしらせる。
「そもそも、お前がこいつを庇(カバ)うから、俺は悪魔と契約をする羽目になったんだ。俺がこんな姿になったのも――。杏子が逝(イ)ってしまったのも――すべては貴様ら妖孤が邪魔をしたからだろう!」
「それは違う。彼女は死しても君の隣にいることより、天界で自由になることを願ったんだ」