美狐はベッドの上で愛をささやく
「……だまれ、だまれだまれだまれっ!」
倉橋さんの霊力と、悪魔から与えられた力が膨れ上がった。
恐怖と混沌。
あらゆる闇が、洞窟全体を包む。
……寒い。
それは物理的な寒さじゃなくって……心を凍らせてしまうような、孤独と悲しみ。
そして、憎悪。
それらがない交ぜになっている。
体の震えが止まらない。
「……だったら、この小娘の魂を杏子の体内に入れて、杏子としてせいぜい可愛がってやるさ」
倉橋さんは、さっきまでの怒鳴り声とは打って変わって、今度は静かにそう言った。
だけど、その声は、まるで闇そのもので、凍えそうに暗く、冷たい。
わたしの恐怖をさらにあおった。
わたしの首元に、冷たい刃物が近づく……。
首元に痛みを感じて視線を下に向けると、刃物はほんの少し、赤いものが付着していた。
それはきっと、わたしの血だ……。
「紗良! 貴様っ!!」