美狐はベッドの上で愛をささやく
好きな男性(ヒト)の傍にいることができるなんて、なんだか夢みたいだ。
嬉しすぎて涙が出そう。
わたしは紅さんの背中に腕をまわし、広い胸に頬を擦(ス)り寄せた。
「良い返事だね。
それで甘えん坊な紗良(サラ)姫、式を挙げる日取りは何時がいい?
いっそのこと今夜にしようかな……もう、逃げられないように……」
「えっ? あの……」
式って……。
もしかして挙式のこと?
焦っている間にも、紅さんはこうやってどんどん決めていってしまう。
「そうしよう。愛おしい我が姫の考えが変わらぬうちに」
「えっ? あの……」
わたしの意見なんて聞く気がないみたいだ。
紅さんは尋ねた後、すぐに結論を出してしまった。
「あ、ひとつ言っておくが、妖狐族の結婚は人間のソレとは違ってね、永遠を誓うものだから、紗良はもう、わたしから離れられないよ」
「…………はい」