美狐はベッドの上で愛をささやく

抱きしめられたままそう告げて、紅さんの様子を確認するため、そっと顔を上げると、紅さんは愛おしそうに赤茶色の目を細めていた。


「紗良……」

「っん……」



ボソリ。

紅さんが、耳元でわたしの名前を呼ぶ。


耳孔(ジコウ)に向かって直接、囁(ササヤ)かれる声に、くすぐったくて身震いしてしまう。


おかげでヘンな声が出てしまった。


「紗良、あまりわたしを刺激しないで。今すぐにでも君を欲してしまいそうになる」


えっ!?

「欲する!?」


そう言われれば、前にもそんなことを告げられたけれど、それって……どういう意味……?


だって、わたしはもう、紅さんの傍にいるよ?




首を傾げると、紅さんが眉間に皺(シワ)を寄せ、微笑んだ。




……どうしてだろう?


紅さん、ものすごく困ってるみたい?


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