美狐はベッドの上で愛をささやく
その瞬間、わたしの全身が凍りついた。
ゆったりとした気分は、跡形もなく消え失せる。
だって、だってわたしは今、ベッドの上にいる。
わたしは眠ってしまっていた。
ここはどこ?
そして、意識を失ったわたしは、いったい何をしたの?
わからない。
わからない。
もしかして、トラックに轢(ヒ)かれそうになった時、わたしを助けてくれたあの男の人の部屋なのかな?
眠ってしまえば意識を失う。
眠りは、わたしにとって許されないこと。
だって、霊体たちは意識を失ったわたしに乗り移り、魂を汚すため、誰かを傷つけるはずだ。
もしかすると、わたしはあの優しそうな人を、手にかけてしまったのかな……。
奏美(カナミ)さんのように、首を絞めたのかもしれない。
どうしよう。
どうしよう。
わたしは、なんということをしてしまったんだろう――……。