美狐はベッドの上で愛をささやく
そして地面にぶち当たって、痛みを訴える……ハズ。
だから痛みを感じないのはおかしい。
それにそれに、階段から勢いよく落下したんだし、大きい音がしてもいい……ハズ。
それなのに、何もないなんて……。
と、いうか……。
あれ?
わたしの体、なんか、あたたかい?
まるで、何かに包まれてるみたいじゃない?
不思議に思って、恐る恐る、閉じた目を開けると――。
そこで茶色い布が見えた。
――え?
――――えっ?
――――――ええっ!?
意味もわからず視線を少しずつ上げていくと……。
「大丈夫? 怪我はない?」
鼻にかかった甘い声が降ってきた。
その声の人は、誰だか知っている。
トラックに轢かれそうになったわたしを助けてくれた男の人だ。
「え? あれ? あの……」
どうしてこの人は生きているの?