美狐はベッドの上で愛をささやく
わたしは霊体に意識を乗っ取られたんじゃなかったの?
わたしは、この人を襲っていないの?
どうして?
「大丈夫? どこか打った?」
しばらく硬直していると、男の人は、しどろもどろになっているわたしの顔を覗きこんでくる。
赤茶色の瞳がみすぼらしい灰色の髪をしたわたしを映し出した。
だけどダメ。
綺麗な瞳に汚いわたしを映しちゃいけない。
「……っつ!!」
わたしは唇を引き結び、顔を俯(ウツム)けた。
「どこを打ったの? 大変だ、手当てしなければ!!」
ふわり。
突然、わたしの体が宙に浮く。
「えっ!?」
男の人は軽々とわたし持ち上げ、横抱きにした。
いくらわたしがご飯を食べていなかったとはいえ、男の人の体はすらりとしていて、細い。
筋肉なんてついてなさそうなのに、簡単にわたしを持ち上げるなんて、見かけよりずっと力が強いんだ……。