美狐はベッドの上で愛をささやく
「あの、わたし……」
そう言ったわたしの体は、すでにベッドの上に下ろされた。
わたしはもちろん、男の人の顔を見ることが出来ず、モコモコのカーペットが敷いている床を見つめる。
声が震えてしまうのは、初対面の人にもわたしが醜いと肯定されるのが怖いから。
「本当にどこも痛くないです。怪我もしていないです……だから……」
語尾が少しずつ声がしぼんでいくわたし。
男の人の顔が近づいてくる気配がした。
……見ないでほしい。
わたしを、そんな綺麗な目で見つめてこないでほしい。
わたしは父親を殺した醜い魔物……。
そこらへんにいる幽霊よりもずっと性質が悪い魔物なんだから……。
「汚いから見ないで……」
言ったとたん、目から頬に向かって流れる涙。
その涙はやがて、わたしの顎(アゴ)を通って、膝の上でギュッと握りしめている拳に当たった。