美狐はベッドの上で愛をささやく
わたしは男の人の腕の中でブンブンと頭を振って、汚(キタナ)らしい灰色の髪をひと房握ると強く引っ張った。
……怖い。
さっき会ったばかりの人に、気持ち悪いと肯定されるのが怖い。
だけど、それは本当のこと。
だから仕方がない。
わたしは唇を噛みしめ、何を言われてもいいように、覚悟して下を向く。
そうしたら、男の人はわたしの顎に指をかけて、上を向かせた。
汚いと肯定される言葉を聞きたくなくて、でも抱きしめられているから身動きが取れない。
おまけに、顎を固定されているから顔も逸(ソ)らせなくて……。
だから代わりに目をつむる。
「わたしには、君の髪は銀色に見えるけれど?」
「………………え?」
何か……わたしと無縁な言葉を言われたような気がする。
つむっていた目を恐る恐る、ゆっくり開けていくと……。