美狐はベッドの上で愛をささやく
でも、幽霊と向き合うような、そんなゾクゾクした怖いものじゃない。
体はまるで金縛りにあったように動けない。
……ううん、違う。
動けないんじゃなくって、動かないんだ。
わたしの姿が男の人の瞳に映っているのを見ると、不思議。
さっきまで醜い自分の姿を映しているっていう、罪悪感みたいな恥ずかしさが無くなっていく……。
その代わり、頭は真っ白になって、何も考えられない。
ボーッとしていると、かすかに薔薇の香りが漂ってくる。
香水……かな?
この香り、前にも嗅いだことあったような気がする。
……どこだっけ?
村のみんなは、そんなお洒落なものはつけてないし……。
それに、いつ霊体が襲ってくるのかがわからないから、外出なんてしていないし……。
薔薇の香りを嗅いだことがあるような気がしたのは気のせいかな?
「綺麗だね……」